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エアサイクルの家の誕生とこれから
「エアサイクルの家」の誕生
 「エアサイクルの家」が発売されたのは1984年。昭和59年のことです。すでに28年目を迎えています。この年はロサンゼルスでオリンピックが開催され、日経平均が初めて1万円台を記録しました。同期生には福沢諭吉の1万円札、アップルコンピュータのマッキントッシュ、風の谷のナウシカ、タカラ缶チューハイなどがいます。

日本で初めて商品化したパッシブソーラーハウスです。同様の工法ではOMソーラーが1987年、ソーラーサーキットが1988年ですから、まさにパイオニア的存在ですね。エアサイクル工法がデビューする10年前、石油危機が世界を襲い、そのことがきっかけとなって自然エネルギーを利用するシステムの研究に拍車がかかりました。また1970年代になってオゾン層の破壊や環境汚染、生物種の絶滅など、さまざまな地球環境問題が顕在化しはじめました。1992年には、「地球サミット」が開かれ、環境破壊を止めて持続可能な発展を目指す宣言「リオ宣言」、温暖化防止のための「気候変動枠組条約」などが合意に達しました。「エアサイクルの家」はそんな世界のトレンドな中で生まれるべくして生まれた待望の家づくり工法だったのです。
工務店フランチャイズの先駆け
エアサイクル工法は、メーカーのフクビ化学と建材商社、伊藤忠建材が全国の大手建材販売店に呼びかけ、地域の工務店から有志を募って工務店フランチャイズ組織を作り、登録した工務店を通して販売されることになりました。当時は工務店のフランチャイズグループがたくさん生まれました。生き残っているのはフクビ・エアサイクルチェーンのほか、ごくわずかです。そんなことからも「エアサイクルの家」、エアサイクル工法が家づくりのプロの間で、いかに信頼されているかがわかりますね。
日本の伝統的家づくりを継承
パッシブソーラーハウスというと、何か新しいテクノロジーを連想しますが、実は日本の伝統的な家づくりを継承した工法でもあります。日本の気候は、夏は高温多湿で梅雨期があり、冬は寒く乾燥するという特徴があります。湿気の多い季節は、ダニやカビが発生しやすく、住まいに使われている木を腐らせることもあります。そんな自然環境に対して、快適さと耐久性を得るために、日本の家は夏の自然を意識して風通しや日照を重視し、木、紙、畳といった呼吸する自然素材で作られていました。雨でぬれてもすぐ乾くし、湿気が溜まらない作りですね。自然に調和した家づくりは、自然に対してパッシブであるということです。
健康住宅「エアサイクルの家」
高度成長期に住宅の工業化が進みました。躯体は安価で時間のかからないコンクリート住宅、資材は工場で量産可能な新建材。開口部はアルミサッシで気密性を高めた冬型住宅です。石油危機や地球温暖化によって、日本の住宅は高断熱、高気密化を進めていきます。こうした傾向は良い面もありますが、欠陥もありました。それがシックハウス症候群です。風通しの悪い閉じた空間の中で化学物質を大量に含んだ新建材や呼吸しない人工素材が多用された結果、ダニやカビが増えたり、結露で腐ったり、あるいは化学物質過敏症やアレルギーに苦しむ人たちが増えてきたのでした。いまでは建材についての規制も厳しくなり、高断熱、高気密住宅には計画換気が義務付けられています。現代の家づくりのトレンドは、環境共生、省エネルギー、健康、長持ち・・・・この4つです。「エアサイクルの家」はすでに27年以上前からこの4つを満たす家づくりを提案、実現していました。
エアサイクルのこれから
平成23年3月11日、東北・北関東を襲った地震と津波でたくさんの家が流失、損壊しました。原発の放射能漏れも心配です。日本経済を担っていた工場、発電所、流通機構も操業停止を余儀なくされました。中東の戦争で石油価格の高騰が懸念されています。これからの日本はますます省エネルギー、とりわけ自然エネルギーの利用が求められるようになります。日本の国はスローライフ大国に生まれ変わるかもしれません。「エアサイクルの家」もこの被災地の再建や人々の健康で快適な暮らしに役立てるように頑張っていきたいと思います。
       平成23年5月

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